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指揮者だって人間だ

晴れた日には洗濯を。

ジョブズが徹底させた「自己責任」 ー 「僕がアップルで学んだこと」を読んで

この本を読みました。

米国アップルでシニアマネージャーだった筆者がつづった、アップルの文化とそこで得た物についての本です。

ジョブズの訃報の際にこの記事で話題になっていた人ですね。
 
この本では何度も「責任」という言葉が出て来て、ジョブズが責任をいかに重んじていたかがよくわかります。
アップルの責任に対する考え方に色々と思うところがありましたので、この本に書かれている仕事への責任について、自分の意見とともにちょっとまとめてみました。
 

アップルはジョブズを追放した後、大きな赤字に転落したのは有名な話です。

筆者によると、90年代のアップルは経済的な損失を産んだだけではなく社内の風土までボロボロにしてしまったそうで、詳しくはこの本の序盤に書かれていますが、とにかくひどいありさまで今のアップルから想像できないような惨状だったそうです。
ジョブズが復帰して、徹底した独裁体制と利益至上主義を貫いたのちにやっと生まれ変わることができたとのこと。
 
ジョブズは社員に自分が抱えている仕事に対しての責任を持たせようとしていました。
ジョブズ不在のアップルには自由な雰囲気はありましたが責任を取ろうとする精神がなかったそうで、文化祭の出し物のようにちょっと面白い製品であればためらわず出してしまうような放埓っぷりだったそうです。
はたから見ているとそりゃ赤字にもなるわと思うのですが、なかなか自浄作用というのは働かないのでしょうね。
ジョブズ復帰後は徹底したプロジェクトの厳選(350あったプロジェクトが10に)が行われて、動いているプロジェクトでも利益を産まなければ徹底的に責任を追及されたとのことでした。
 
また、自分の仕事に対する説明責任が常につきまとったというエピソードも書かれています。
トップから平社員まで全ての社員が自分の業務を完璧に把握する必要がついて回り、エレベーターでジョブズに仕事の話をされてしどろもどろになっていると「お前は自分の仕事も説明できないのか、クビだ」と解雇されたという噂まで出てきたといいますから相当なもの。
社員は必死になって自らの仕事の説明責任への自覚を取り戻したそうです。
責任を負う反面、個人の裁量の幅も増え、責任をセットにすればある程度の自由は認められたとのこと。
自分の企画を通すために自発的にさまざまな人にかけあっていくのは、さながらひとりひとりが小さな経営者のようだったと書かれているのが印象的でした。
 
責任をもって仕事をすることは大事とよく言われますが、そもそも責任の所在が明確でないと責任感を持って仕事に取り組むことは難しいんですよね。
ちゃんと汗を流した分だけの評価が(プラスにせよマイナスにせよ)返ってくるというか。
プロジェクトの成功を横取りされたり、他人の責任を押し付けられる職場では責任を取るメリットは無いので、責任をもってやり遂げる人はただのお人好しであり利用されて終わっちゃうわけです。
まずは会社のシステムとして功績と代償が自分の手元に来るようになっていないと、真の意味での責任感は生まれないと思います。
 
意外と責任の所在が曖昧になっている会社は少なくないのではないでしょうか。
会社の規模が大きくなると、ちょっとくらいの失敗では部署全体の責任や役員の責任というように責任感がぼやけてしまいます。
代償もせいぜいボーナスがちょっと減るくらいで、それも部署全体で一律に減るのでしょう。
実際に筆者も以前のアップルでは「自分の仕事が会社の利益にどのように貢献するのだろうか」と思っていましたが、ジョブズ復帰後はそんなことを考える暇もなく自らの責務を全うするのに必死だったそうです。
責任感を産むには、責任感を持ちやすい環境を作ることが何より大事なんですね。

私はここまで強烈な責任感をもたせることが必ずしもよいとは思いません。
会社の利益は上がりますが社員にかかるストレスは相当な物でしょうし、筆者自身も「アップルは日本で言うところのブラック企業かもしれない」とさえ述べています。
この場合何が社員にとって幸せな職場かというのは難しい問題で、やりがいも責任もない沈みゆくボートに乗っているか、世界一になるために休まずオールをこがされて爆進するボートに乗るのがいいかという選択にも通じるかと思います。
ただ、このジョブズの独裁体制がアップルを蘇らせて社員のモチベーションを取り戻し世界に名だたる製品を生み出して来たのは紛れもない事実ですし、ジョブズが会社を蘇らせたミラクルをまとめたこの本から私は多くの物を得ることができました。
 
これ以外にも、アップルの社内政治がシリコンバレーいちひどい話など興味深い話題がたくさんありました。
アップルというと熱狂時な信者とアンチが言い争いをしているイメージもあったのですが、この本はアップルのいいところばかりを挙げた宗教書ではなく、あくまで客観的に見たアップルの文化とそこから学んだことを書かれているのが良書だと感じました。
これから社会人になる人が読むにはちょっとひねくれた本かもしれませんが、会社に籍を置いて数年経った人が読むと最高に刺激になるのではないかと思います。 
面白かった!

 

Think Simple ―アップルを生みだす熱狂的哲学

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スティーブ・ジョブズ I

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